マスクなどの衛生用品不足が介護事業所で深刻に

新型コロナウイルスの感染拡大によるマスクや消毒用アルコールなどの品薄が、介護事業所などにも影響を及ぼし始めている。

一般社団法人全国介護事業者連盟は、加盟する全国の特別養護老人ホームなど約6000事業所に対し「新型コロナウイルス感染症に係るマスク等衛生用品不足についての『緊急調査』」を3月3、4日に実施。1610事業所から有効回答があり、その結果を公表した。

調査内容は、介護事業所などで日常的に使われる衛生用品である「マスク」「消毒用アルコール」「使い捨て手袋」の、現段階における3月(1ヶ月間)に使用予定の確保状況だ。
 

約85%の事業所で3月に使用予定のマスクを十分確保できず

まずは全国的に品不足が続いているマスク。

厚生労働省は「現在、予防用にマスクを買われている方が多いですが、感染症の拡大の効果的な予防には、風邪や感染症の疑いがある人たちに使ってもらうことが何より重要です。」などとポスターでも訴えているが、なかなかマスク不足が解消されていない現状がある。

調査結果では、約85%の事業所では3月分の使用量が十分に確保できていない状況で、「在庫が全くない(0%)」事業所も約9%あった。そして1番多かったのが「41〜50%の確保状況」であり、半数以上の事業所で通常の半分以下しか確保できていない状況にあることが分かる。
 

3月に使用予定のマスクについての確保状況(画像:全国介護事業者連盟)
3月に使用予定のマスクについての確保状況(画像:全国介護事業者連盟)
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続いては、手など皮膚の消毒を行う場合に有効な「消毒用アルコール」。

必要な量が確保できているか聞いたところ、「すでに在庫がなくなっている(0%)」と回答した事業所が約25%に上った。その一方で、「必要量の在庫をすべて確保している(100%)」と答えた事業所が約22%あった。

「在庫ゼロ」と「在庫は揃っている」が、約4分の1ずつを占めるという極端な状況になっている。
 

3月に使用予定の消毒用アルコールについての確保状況(画像:全国介護事業者連盟)
3月に使用予定の消毒用アルコールについての確保状況(画像:全国介護事業者連盟)


最後は「使い捨て手袋」。

3月使用分については、約33%の事業所が必要量を確保できていて、「既に在庫はなくなっている(0%)」と答えた事業所は約5%にとどまった。「使い捨て手袋」については、まだマスクや消毒用アルコールに比べると、確保しやすい状況にありそうだ。
 

3月に使用予定の使い捨て手袋についての確保状況(画像:全国介護事業者連盟)
3月に使用予定の使い捨て手袋についての確保状況(画像:全国介護事業者連盟)

7〜8割の事業所で直近1週間に衛生用品の納品がない


なお今回の調査では、業者からの納入状況についても尋ねている。マスク、消毒用アルコール、使い捨て手袋については、7〜8割の事業所において直近1週間の納品がなく、今後の確保の見込みが立ってないとのことだ。
 

(画像:全国介護事業者連盟)
(画像:全国介護事業者連盟)

調査ではこれ以外の品不足についても質問しており、デマが原因で一時的に店頭から姿を消した、「トイレットペーパー」「ペーパータオル」「ティッシュペーパー」などの紙製品の不足を訴える事業所が多かったという。

そして最後に、連盟は今回の状況における要望事項をまとめ「介護事業所では衛生用品の使用は常時不可欠であることから、早急な物資の確保及び自治体等を通じた優先的な供給をお願いしたい」などと呼びかけていた。

この緊急調査の結果から、介護施設で今、マスクなどの衛生用品が不足している状況は分かった。では、この状況が続くとどういうことが懸念されるのか? そして今、世間に強く訴えかけたいことはなんだろうか?

全国介護事業者連盟の担当者に話を聞いた。

衛生用品の不足状況を正しく捉えようと緊急調査

ーー調査を緊急に行った理由は?

新型コロナウイルスは高齢者ほど重篤化しやすい傾向にありますので、マスクやアルコール消毒を含めた感染予防は、一般の方以上に介護従事者は細心の注意を払わないといけません。衛生用品が全国的に品薄になっている中、施設でも不足状況にあるという声を多数いただいたことから、その実情を正しく捉える必要があると考えて実施しました。


ーー通常ならば、どの衛生用品も100%確保されているもの?

はい、当然確保されています。そして、もし発注のし忘れなどがあった場合でも、通常でしたらすぐに納品されていました。今回のように介護事業所の在庫がなくなってしまうのは、緊急の事態だと捉えています。


ーーこの結果を受け、連盟ではどのような対応をしている?

事業所の方々に対しては、私たちから情報発信をしていくことが重要だと考えています。厚生労働省からいろいろな通達が出されているのですが、この大変な状況の中では現場は全部の通達にきちんと目を通せていなかったりします。私たちの方で重要な項目をピックアップし、該当する介護サービスの方に適切な情報発信をするなどしています。
 

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)

「高齢者施設では衛生用品がより重要、不要な買い溜めは控えて」

ーーでは、政府に対しては?

適切な対応を取っていただきたいという提言や要望を出させていただいております。この調査結果についても厚労省などに情報提供をし、検討いただきたいとお伝えしています。

また感覚値であるのですが、衛生用品の確保状況について、事業所の規模によって大きな違いがあるように感じています。数カ所も事業所を展開しているような企業でしたら、たくさん購買ルートを確保されているので、このような状況でもしっかりと在庫を保有されているようです。

一方で、中小・零細の事業者さんほど購入ルートが限られているので、いつもお願いしている業者さんからの納品がないと、皆さんと同じように薬局などで買うしかありません。中小・零細企業さんほどより逼迫している状況にあると思いますので、ここに対してしっかり対策をとってほしいと思っています。


ーー最後に連盟として、何を1番訴えたい?

先ほどもお話しさせていただきましたが、やはり「高齢者ほど重篤化しやすい」ことと、マスクの効果が予防というよりも「感染させないためにつける」ということですね。この点から、高齢者施設では衛生用品がより重要だということをお伝えしたいです。

また消毒用アルコールを含めて不足している状況でありますので、不要な買い溜めなどは控えていただくようお願いしたいです。政府には、このような事情に配慮していただき、高齢者施設向けの対策をぜひ考えていただきたいです。

 


新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、誰もが不安になるのはわかる。しかし、担当者が話すように、必要な人に届いていない現状がある。厚労省が発表する資料などで正しい情報を把握し、衛生用品の購入には必要最低限にとどめてほしい。

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プライムオンライン編集部
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